金属AMの未来を切り拓く:兵庫県立大学における最新研究と粉末評価技術の活用事例
本ウェビナーでは、粉末冶金および金属AM(Additive Manufacturing、以下AM)の分野で長年にわたり第一線を走り続けてこられた、兵庫県立大学 金属新素材研究センター 特任教授・柳谷 彰彦 先生をお迎えし、同センターでのAM研究の最新動向をご紹介いただきます。 兵庫県立大学金属新素材研究センターでは、DX時代に対応すべく、金属AM技術を中核に据え、2019年7月に活動を開始しました。AMの原料粉末からポストプロセスに至るまで、AMに関わる企業や3Dプリンタ導入を検討する企業を支援し、AMの普及活動および金属新素材に関する大学の研究を推進しています。 同年9月には「ひょうごメタルベルトコンソーシアム」をキックオフし、会員企業との共同研究や学術相談などの産学連携もスタートしています。本ウェビナーでは、研究事例と設備活用事例を中心にご紹介します。
ご講演内容
兵庫県立大学におけるAM研究紹介
(FT4パウダーレオメーター、モフォロギ4の活用ほか)
兵庫県立大学金属新素材研究センターはDX時代に対応すべく、すでに注目されていた金属AM技術を中心に据え、AMの原料粉末からポストプロセスまで,AMに関わろうとしている企業、将来3Dプリンタの導入を検討している企業を支援すること、AMの普及活動、および大学として金属新素材の研究活動をしていくことなどを目的に、関連設備類を導入し2019年7月スタートした。同年9月には「ひょうごメタルベルトコンソーシアム」をキックオフし、会員企業と共同研究・学術相談など開始した。本ウェビナーでは、本研究センターにおけるAMの研究例として、AMによるゴルフのパターヘッド、銅合金のAM、およびMIM(Metal Injection Molding:射出成形 、以下MIM) 用の水アトマイズ粉末を用いた粉末床溶融結合(L-PBF)法によるAMを報告する。また、金属AMの粉末製造方法として、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法、プラズマ回転電極(PREP)法、SWAP法、およびプラズマ溶融法についても紹介する。さらに小型ガスアトマイズ装置、3Dプリンター、および昨年導入したFT4パウダーレオメーター、画像解析システムモフォロギ4など、金属粉末関連の設備の活用事例を紹介し、加えてひょうごメタルベルトコンソーシアムの活動についても報告する。
特に本ウェビナーでは、水アトマイズ粉末を用いたL-PBFによる造形の研究事例をFT4パウダーレオメーター、モフォロギ4の活用事例を交えて示す。私たちは、これまでにAMにおける金属粉末の重要性について述べてきた。さまざまな金属粉末の製法の中で、バインダージェット(BJ)法で使用される水アトマイズ粉末を除くと、ほとんどガスアトマイズ粉末が使用されている。これは、ガスアトマイズ粉末は球形で流動性に優れ、スキージングに有利であることによる。ところがガスアトマイズ粉末は非常に高価であり、原料粉末のコスト削減はAMがさらに広く実用化するための主要な課題の一つである。一方、従来MIMや一般的な焼結製品に使用されてきた水アトマイズ粉末はガスアトマイズ粉末よりも非常に安価であるが、その形状は不規則異形状でありL-PBF法では使用されていなかった。MIMにおいては焼結後の優れた表面平滑性および生産コストと環境影響を軽減するために焼結時の省エネの必要性も求められてきた。その結果、球形の微細粉末が指向され製造が実用化された。私たちはこの微細な球形の水アトマイズを用いてL-PBFによる造形が可能であることを明らかにし、国際会議などで報告してきた。この内容についても本ウェビナーで紹介する。
小型ガスアトマイザー (1 kg溶解用)(日新技研㈱様製)
L-PBFによる水アトマイズ粉末適用例(エプソンアトミックス㈱様提供)
AMによるゴルフパターヘッド(ハニー化成㈱様提供)
講演者
兵庫県立大学 特任教授
金属新素材研究センター
副センター長
柳谷 彰彦先生
このような方におおすすめ
粉体特性評価機器(FT4パウダーレオメーター、Morphologi 4 など)の具体的な活用例を知りたい方
金属3Dプリンタの導入を検討中の企業・技術者の方
講演者紹介
兵庫県立大学 特任教授
金属新素材研究センター
副センター長
柳谷 彰彦先生
略歴:
山陽特殊製鋼の粉末事業の準備・立ち上げから関わり、多くの金属粉末製品の実用化を果たした。粉末冶金の世界を従来のニアネットの焼結部品から高機能材料へと取り組み、新たな市場創成を行い、高機能材料の分野において金属粉末の地位を切り拓き確立した。経産省プロジェクトTRAFAMの理事として金属3Dプリンタの技術開発・普及にも貢献した。2015年に同社に金属3Dプリンターを導入し、金属AMおよびAM用粉末の研究に関わる。2019年に兵庫県立大学金属新素材研究センター特任教授に就任、同年「ひょうごメタルベルトコンソーシアム」をキックオフし、企業との共同研究を通じてAMに関する実用化に取り組んできた。 現在、兵庫県立大学金属新素材研究センター副センター長ならびにコンソーシアム副委員長として金属3D積層造形の研究開発、普及活動。2020年粉体粉末冶金協会3D金属積層造形委員会幹事。2010年日本金属学会技術賞、2022年粉体粉末冶金協会技術功績賞他。